ワタリドリ計画は、麻生知子さんと武内明子さんによるアートプロジェクトです。
麻生さんと武内さんは、日本各地をワタリドリのように旅して、取材したことを題材に作品を制作します。
その作品をその土地で発表し、そしてまた次の土地へ向かうのです。
2009年春から始まった、ワタリドリの旅は、北は札幌から南は九州天草にまで及びます。
2人は、旅先で撮影した白黒写真に、油絵具で彩色した、旅の絵葉書を共同制作しています。
なんと、これまでに約500種類!
絵葉書の中には、どこかに必ず2人が写りこんでいます。
トップの写真:《ワタリドリ計画旅の手彩色絵葉書:青葉おでん街》2009
2人は、2009年、静岡市美術館の前身の静岡アートギャラリー最後の展覧会「THE LIBRARY 「本」になった美術」展に参加するため、静岡に飛来しました。
その際に制作された絵葉書を見てみると、奥の方に彼女たちが写っています。
その姿は、ひかえめながら印象的です。
彩色する際、空の色を明るくしたり、不要な部分を塗り隠したりすることもあるそうです。
そして先月、ワタリドリ計画の2人は、静岡市を中心に二泊三日の取材旅行をしました。
静岡への旅は、11年ぶりとのこと…!
今回は寸又峡、梅ヶ島、三保松原や登呂など静岡各地をまわった旅となりました。
再び訪れた三保松原での撮影風景を一部お見せします。
三保松原は、海岸線に沿って松並木が連なる景勝地です。
大きく曲がった松林のなかで直立する彼女たちがいます。
その奥には海岸も見えます。
今回の旅で2人は、「旅とは風景のな かに自分をまるごと置いて風景を味わうこと」だと実感したそうです。
この景色がどのような絵葉書になるのでしょうか。楽しみですね!
2人からいただいた旅の感想です。
—–
10年ぶりの静岡
静岡を旅したのは2009年以来、約10年ぶりのことでした。
同じ場所を旅すると、しぜんと10年前にその場所にいた時のことを考えます。10年前と今。
風景を見ながら、この10年間の自分たちの変化について考える旅になりました。
学校を卒業したばかりで、ワタリドリ計画の旅をはじめたばかりだったころ。
旅にも展覧会にもいつも気持ちがはやって、「静岡と言えば富士山」と決め、富士山を探し回る旅と展覧会をしたのが10年前。
それから各地で旅をずっと続けてきました。
このごろは旅をたのしむ気持ちを大切にするようになりました。
そして今、コロナの影響でその旅がしにくいという初めての状況になりました。
しばらく生活以外の外出をしなかった中で、静岡という目標ができたための久しぶりの旅が今回の静岡の旅でした。
久しぶりの外出で、旅とは風景のなかに自分をまるごと置いて風景を味わうことだと実感しました。
またこの場所に帰ってくることができました。
10年前と同じ場所でも、風景もまた私たち同様に10年前と同じではありませんでした。
静岡の旅の後半、10年前の私たちと同じ年代の軍司さん(※静岡市美術館、学芸員)が旅に同行してくれました。
彼女との旅は10年前の自分たちを思い出すというより、新しい風景に導いてくれるような感覚になりました。
旅の帰り道、もうすっかり忘れかけて諦めてもいた富士山が、高速道路の行先の真正面に大きく見えました。
ワタリドリ計画
麻生知子・武内明子
—–
今回の旅の絵葉書は、展示会場でご購入いただけます。
絵葉書を通して、彼女たちの旅した景色を見てみませんか。
皆さまのご来館をお待ちしております。