東静岡アート&スポーツ/ヒロバに展示を予定している石上和弘さん。その制作状況をお知らせする、アトリエ訪問のレポート第3弾(最終回)です。
《アフターアップル》の一部。塗装の汚れを落とし、剥げたり褪せたりした部分をリタッチして、きれいな色に戻ってきています。奥に、別の一部が見えますが、そちらは赤色です。《アフターアップル》はリンゴの反面が緑、残りの反面が赤です。南側、つまり日当たり良く、リンゴが色づきやすい方に、赤い面がくるように設置されます。展覧会が開幕したら、現場で確かめてみましょう。
倉庫の奥に、浮き輪のような作品が積んでありました。これは9月上旬までグランシップに展示されていた作品「船に浮かぶ形/船が浮く形」の一部です。役割を終えて、お休み中。でも、今展にも何らかの形で再登場するかも?!とのこと。あまり期待しすぎないようにして、でもちょっと期待しながら、待ちましょう。
新作のバナナは、ここまで形になってきました。作品名もストレートに《バナナピール》に決定。
アトリエの中では大きく感じられるが、屋外へ出した時にどう見えるか、十分に想像しながら作らなければならない、とのこと。
皮はペタッとした平面ではなく、中央に稜線を付けた立体的な形をしています。
そのことは、見た目の上でとてもかっこよく感じられますが、よくよく考えたら、すごいことかもしれません。
というのは、帯のような2次元の物体ならまだしも、3次元の物体がくねくねと曲がりくねっているわけです。
たとえば、折り紙を細い短冊状の帯にして、それを曲げるのは簡単なことです。でも、その帯を中央で山折りにし、そしてそれを曲げてみろと言われても、普通はできません。
板を何枚も重ねあわせて貼っていき、厚さを調整します。皮の部分ごとに厚さは微妙に異なるそうです。
皮の中央に稜線があることや、厚さの細かい調整、さらには皮の側面の処理(現時点ではまだですが)などは、現物のバナナの皮とは異なる形です。しかしこうした造形的な工夫が、この物体を彫刻作品にするのでしょう。こうした制作工程は、もう彫刻家の感性の部分です。
ただの物と彫刻との違いを言葉にするのは難しいです。でも一目瞭然でもあります。彫刻は、ちゃんとしているというか、凛としているというか。このバナナの皮もきっとそうしたたたずまいで、私達の前に登場することでしょう。
曲線定規を自作して、それをあてて計測しながら、板を貼っていきます。細かい作業が続きます。
最表面には、黄みの強い合板を用いる予定とのこと。完全に塗装で黄色を出すよりも、できるだけ木肌を活かしながらバナナの皮らしい色を作っていくそうです。
展覧会開幕まで、もう半月もありません。はたしてバナナの皮は出来上がるのでしょうか?!
でも、おそらく今まで見たこともないような彫刻作品がお目見えするに違いありません。アトリエレポートは今回でお終いです。あとはワクワクしながら待つこととしましょう。
これまでの制作ノートはこちら。
制作ノート:石上さんのアトリエにお邪魔しました。(その2)
制作ノート:石上さんのアトリエにお邪魔しました。
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