制作ノート:石上さんのアトリエにお邪魔しました。

めぐるりアート静岡2020の開催まで、残り3か月を切りました。各作家さん、それぞれ出展にむけて制作をすすめていただいている最中かと思います。その中で、彫刻家、石上和弘さんが制作のようすを見せてくださいました。アトリエを訪ねて、その進展をレポートしたいと思います。

 トップの写真は《アフターアップル》の一部です。山口県宇部市の展覧会で大人気を博した作品です。いったん解体して、汚れを落としたり、補修したりしています。何枚もの細長い合板を張り合わせていくことで、この作品はできています。

 人が腰かけることができる部分です。屋外に展示されるため、この部分には雨天時には水がたまります。それを排水するためのドレン孔、溝が切ってあります。完成時には隠されてしまうので、補修中だからこそ見ることができる部分です。これら解体中の状態を見ると、作品全体が、非常に細かい高度な木工技術で作られていることがよくわかります。でもご本人がおっしゃるには、「いや、宮大工など、上には上がいる」とのこと。あまりにレベルの高すぎる話で、恐れ入るほかありません。

 《道の作り方》の車輪の一つ。2018年の本展出展のあとメッキ加工されて、風合いが少し変わっています。今回この作品は少し手直しされて、また違った見え方で展示されるそうです。その後ろには、《アフターアップル》の芯になる構造体が置いてあります。

 新作のための構想メモ。バナナ/芭蕉の皮がモチーフです。3枚にむいた皮をふわっと置いたような形になるそうです。

 曲げ合板という素材について説明いただきました。木材ですが、くにゃりと曲げることができます。これを扱っているうちに、バナナの皮というモチーフが思いついたそうです。素材との対話の中から、作品の構想が生まれます。

 バナナの皮の1枚になる部分が、制作途中でした。板を張り合わせながら、少しずつ湾曲させていきます。

 繊細さと力強さが、ともに求められる作業です。

 こうした皮3枚が、へたの部分で合わさって、全体ができます。とりあえず2枚あわせて様子を見ている状態です。

3点支持は、ものを立てるときの基本です。でもこれほど曲がりくねった形を合わして、それがほんとうにできるのかどうか。彫刻作品としては、たいへんチャレンジングなものになりそうです。

これらの作品が、この後、完成に向かってどのように制作されていくのか。1月ほど後に、またアトリエを訪ねてレポートしたいと思います。お楽しみに。