日詰明男さんアーティストトークレポート 「竹」を使ったパフォーマンスとともに(11/1)

東静岡アート&スポーツ/ヒロバを訪れ、真っ先に視界に入るのが日詰さんの作品『Giant Bamboo Star Cage』ではないでしょうか。

こちらの作品、なんと1本8メートルの竹材を30本組み合わせているというから驚きです。

遠目から見ても目立ち、近くから見てもとても迫力があります。

11月1日(日)、巨大な竹で作られた本作品を背景に日詰さんのアーティストトークが始まりました。

撮影:遠藤幸廣

使用されている素材「竹」の魅力について、「竹は軽いし、強いし、手に入りやすい!」と日詰さんは語ります。

特にその「軽さ」を強調して、「この作品を木材で組み立てたならクレーン車が必要になってしまいます。」と笑顔で付け加えていました。

それを受けて、キュレーターである以倉さんは「リサイクルもされて非常にエコロジカルな素材であるにも関わらず、日本ではあまり注目されていませんよね。」と答えます。

確かに近年、竹は日常ではあまり見かけない素材ではあります。しかし、少し前の工業化が今ほど進んでいなかった時代には、暮らしやあそびの中でよく使われていたように思いあたりました。自身でものづくりをしようと思った際に、竹はとても手軽に扱うことが出来る素材だったのではないでしょうか。

お話を聴いていて、「竹」という素材の魅力の再発見をしました。

1本約2メートルの竹を数本組み立て、『Giant Bamboo Star Cage』の小型サイズのものを手慣れた様子で、素早く作り上げてしまった日詰さん。

そしてこの黄金比に基づいた音楽も存在するとのこと、「たたけたけ」から始まるリズムを竹を叩いて4人でそれぞれ刻みます。

一人ひとりは単純な一定の繰り返しのリズムなのですが、組み合わさるとどんどん複雑になり、不均等にも聞こえてきて不思議な響きです…。

日詰さんは大学で建築を学び、以来「黄金比」に魅了され制作に励んでいるのだと言います。

私たちは“美”を直感的に感じます。例えば植物や結晶をはじめ自然界にも、この「黄金比」が溢れているのだと言います。

「人は言葉を過信しすぎている、言葉では説明できない“美しさ”を純粋に感じてもらいたい。」

「法則性のあるものは“美しい”が、やがてその形は当たり前になっていく。」とも仰っていました。

身近なものであれば、名刺やクレジットカードなど数学的な比率を基準としてデザインされているものでしょうか。確かに、私たちはこれらの道具を使っているとき、無意識に心地よさを感じています。

日詰さんの作品は、当たり前の中に隠された法則性を私たち鑑賞者に気付かせてくれます。

「黄金比」は歴史的な芸術作品の中にも、実は隠されています。

『ミロのビーナス』、『モナ・リザ』、『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』などが挙げられます。

今回のアーティストトークでは、一見縁遠いような数学と美術の世界の奥深い関係性を実感した時間となりました。

アート作品は異なる分野を結び付け、私たちに新たな気づき、そして興味・関心を与えてくれます。

樋口加奈(めぐるりアート静岡サポートスタッフ/静岡大学教育学部4年)

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