21日ヒロバ・ライブ&アーティストトーク開催されました
他の会場より一足先に展示の開始された東静岡アート&スポーツ/ヒロバにて、21日、参加作家である白砂勝敏(かつとし)さんと石上和弘(かずひろ)さんのアーティストトークが行われました。
トークに先駆け、まずは造形家でもあり演奏家でもある白砂勝敏さんのライブ演奏がスタート。
白砂さん(写真右)が吹いているのは、今回の展示でも見ることが出来る自作の「ディジュリドゥ」と呼ばれる楽器。
鼻から吸って口から吐く、「循環呼吸」という独特の吹き方で演奏されるオーストラリアの管楽器で、力強い低音を連続して響かせての演奏は迫力満点。
写真左で笛を吹くのは、白砂さんと同じく手作りの楽器を各地で演奏しているというご友人のKAERUさん。
驚くほど澄んだ響きを持つ竹笛の音と、ディジュリドゥの低音とが混じり合い、心地よい空気がヒロバへと広がっていきます。
KAERUさんの歌声や数々の手作りの楽器に合わせ、白砂さんは生きたリズムが体に身に付くまで2年間ひたすら基礎のみを叩き続けたというコンガの演奏なども次々と披露。
思わずこちらまで楽器を持って参加したくなるような演奏会に、多くの方が時間も忘れ聞き入っていました。
演奏が終わると、静岡大学の美術教授である白井嘉尚(よしひさ)さんとのアーティストトークがスタート。
沖縄・西表島のジャングルを切り開きターザンのようにサバイバル生活を送ったり、造園業の傍ら全国放浪の旅を続けるなど、当時から型破りな生き方をしていた若き日の白砂さん。
そこからどのように美術の道へと入っていったかが語られていきます。
初めてお金を払って入った沼津の美術館で、白砂さんの独特の風体を目にした副館長に声をかけられ、「個展をやらないか」といきなり持ち掛けられたのが初めての展示のキッカケというのだから驚きです。
そして音楽に関しても、海で拾ったビニールパイプをあちこちの公園に出没し吹いていたら、これも声を掛けられいきなりプロのステージへ。
「普段はやりたいことをやると怒られるが、美術では、やりたいことをやると、やり過ぎると褒められ、認められる。自己の解放をすることが許される」、そんなところが自分にあっているのではないかという白砂さん。
過去の展覧会で白砂さんの楽器の展示を見、「本来音の良さを追求するものである楽器が、造形としても非常に面白いものになっていて驚いた」とは白井教授。
「今回の展覧会ではそのときの楽器の展示のイメージでお願いしたら、それとは異なる石の作品なども現れて広がりを見せた。それも白砂さんらしくて良いのではないか」と言います。
常に様々なことに挑戦し続ける白砂さんの生き方が、ありありと伝わってくる素敵なアーティストトークでした。
引き続いては、ヒロバの中央に巨大な立体作品を出現させた、彫刻家・石上和弘さんのアーティストトーク。
作品をともに紐解くのは、常葉大学の美術准教授であり、常葉美術館の館長でもある堀切正人(まさと)さん。
「道の作り方」と名付けられたその彫刻作品は、一見すると巨大な車輪の付いた何かの乗り物のようですが、実は人の通ることの出来る道の上に車輪が付いている、という不思議な構造。
そしてよく見るとそれ以外にも、あちこちに少しずつ違和感を覚えるような、不思議な構造を持たされて作られています。
たとえば、一本一本違う角度で作られた手すりの柱。
道に対し微妙に角度のある状態で取り付けられた車輪。
それらによって、作品の正面を探そうとするとそれが簡単には出来ないことに気付かされます。
そもそも車輪が正円でなく、楕円形でそれぞれに向きも違っており、遠巻きに見るとどこか落ち着かないような、まるで動き出すような印象を与らえることに気付くかもしれません。
すぐそばを通る国道一号と東海道線とに挟まれ、間近に旧東海道の跡もあるというこのヒロバを、「動いている場所」「落ち着かない場所」と感じたという石上さん。
それは太古から常に人が動き流れていた場所という意味でもあるし、またヒロバのあるこの土地の活用方法が長年変転してきているということも含まれていると言います。
道がまず作られ、文明の発達によって車輪がその上を通るという、道の出来ていく過程。
様々な要因が重なって、微妙な揺らぎを含みながら進んでいくものである都市計画。
この作品を眺め、また実際に道を歩き体験することで、このヒロバという場所の持つそんな様々な歴史へと、想像を掻き立てられます。
完成した後も、作者や鑑賞者が作品に「入り込む」「介在出来る」ことを意識して作られているという石上さんの作品。
トークが終わったあとも、ヒロバを訪れた多くの皆さまが作品に入り込み鑑賞することを楽しんでいました。
ぜひ皆さんも体験してみてください!
(文・吉村)
(写真は製作中の様子)
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