静岡は私が特異点の所在に気づいた場所だと思います。世界中のどの場所よりも、人と人の思わぬ繋がり、見えない交差模様が不思議なほど明らかになる場所でした。必然かと思わされるような偶然の連続。静岡を歩けば、人に出逢うのです。この愛すべき歳差運動をしている場所、静岡から、私は再び生まれたのだと誇っています。私はこの世界の動態、関係性のダイナミズムに興が尽きません。本展の主題にある「つながる」は関係性の明喩ですが、現実の我々の間には、境界があり、宙空があり、そこには余白しかありません。しかし、もしも我々が惑星のように離々として世界を漂っているならば、この余白にこそ関係性はあるのだと、愛おしく想うのです。

奥中章人/Inter-world-sail(2013)

〈Inter-world-sail〉 2013

奥中章人は、しばしば柔らかい構造体の作品を作る。厳密に計算され、組み立てられているのに、柔らかく、可変的である。これは人と人、人と社会の関係の暗喩であると同時に、そうであってほしいという希望でもあるだろう。そうした前向きで、明るい姿勢こそが、今の世にもっとも必要なものなのかもしれない。

2013 「奈良・町屋の芸術祭HANARART」大和郡山市内各所、奈良(2012)
2013 「吹上ワンダーマップ」日置市吹上町内各所、鹿児島(2012、2011)
2011 「伝書鳩プロジェクト」大阪市役所エントランス、大阪
2010 「チャンヲン・アジア・アートフェスティバル」ササンアートホール、チャンヲン/韓国
2009 「105人の時間展」静岡県コンベンションアーツセンター(グランシップ)、静岡